Base Ball Bearニューシングル「海になりたい part.3」リリース& 三度目の武道館ライブ開催!小出祐介さん(Vo./Gt.)にインタビュー
#インタビュー

2022.11.1tue

Base Ball Bearニューシングル「海になりたい part.3」リリース& 三度目の武道館ライブ開催!小出祐介さん(Vo./Gt.)にインタビュー

Base Ball Bear(ベースボールベアー)が10月12日(水)にニューシングル「海になりたい part.3」をリリース。さらに、結成20周年イヤー最終日でもある、11月10日(木)にて三度目となる日本武道館ライブの開催が決定しました!

今回、小出祐介さん(VO./Gt.)にインタビューをしてきました! ニューシングルに込めた想いとその制作過程、10年ぶりとなる日本武道館への意気込みを語っていただきました。

Base Ball Bear

PROFILE
新たな試みを発信し続けているスタイルから“実験バンド”とも呼ばれている大人気ロックバンド。2001年11月11日に結成し、2006年にメジャーデビュー、昨年20周年を迎えた。2016年から、小出祐介(Vo./Cho.)、関根史織(Ba./Cho.)、堀之内大介(Dr./Cho.)からなるスリーピースバンドとして活動している。日本最大の野外フェス「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」や、年越しフェスといえばの「COUNTDOWN JAPAN」には2006年以降から全て出演し続けている。

「海になりたい」は最後にハマったフレーズ

――まず、ニューシングルの「海になりたい part.3」について。これまでにリリースした「海になりたい」「海になりたい part.2」は、それぞれ違った背景をもつ曲ですが、「part.3」となる今作は、どのように出来上がった曲なんでしょうか。

今回は「海になりたい part.3」を作ろうと思って作り始めたのではなくて、実は最後にハマったんですよね。「海になりたい」っていうフレーズが。というのも、すごくややこしい話になるんですが、そもそも「海になりたい」は、2010年に出した3.5枚目の『CYPRESS GIRLS』というアルバムに収録されている「BAND GIRL’S SPIRAL DAYS」の原型なんですね。その「BAND GIRL’S SPIRAL DAYS」の男の子版を作ろうと思ったのが、今回のスタートだったんです。

でも、なんかこう、歌詞を考えて作っているうちに、架空のお話を書くっていうのが今の自分のモードに合わなくて。というのも、3分半の短い曲なので、その中で色んな背景を説明して書くには、どうしてもストロークが短すぎるので適していないなと。だから構造上、お話でありながらも、ちゃんと自分の現在と重なっているものじゃないといけないなというプランに至りました。ただ、それに気付いた段階から、めちゃくちゃ悩んじゃったんですけど(笑)。

終わらない片思いをしている「男の子」と、音楽に対して終わらない追求をしている「自分」

自分は制作を本当に「しんどいな」と思うタイプなんですよね。「なんで俺は毎回こんなことをしなきゃいけないんだろう…」って悩みながら、朝までかかってる。それでもやめないのは、理想の音楽なのか、形にしたいパーフェクトな表現なのか、「これが俺の人生最後の一曲だ」みたいな、何かに辿り着きたくて毎回頑張ってるんですよね。でも、これって恐らく年齢を重ねるごとに、成長していくごとにゴールって変化しちゃうんで、終わらないんですよ。曲という世界の中で終わらない片思いをしている「男の子」と、現実世界で音楽に対して終わらない追求をしている「自分」――。それを重ねてみたら、上手いこと曲になるんじゃないかって。

「海になりたい」というフレーズは、これまでも2度使っているんですが、「part.2」以降も何回も「part.3」にあたるようなものを作ろうとしていたくらい気に入っていて。「海になりたい」って、意味わかんないじゃないですか。でも、何を指しているかはわからないけど、自分のうまく言語化できない感情だったりとか、言語化できない言語とか、そういったものを表現しているフレーズだと思っていて。歌詞にも出てきますけど「心象風景」ですよね、「海になりたい」という感覚自体が。すごく曖昧だけど、自分にとっては「こう言うしかない」っていうワンフレーズなので。それが今回、こういうタイミングでうまくハマったというのは、一カ月近く歌詞を悩んだ甲斐があったなと思いましたね。

――歌詞にもある“サイダー”のように爽やかで、思わず青春時代を思い出してしまう一曲でした。サウンド面での今作の聴きどころはありますか?

サビのコーラスが良いんですよね。関根さん(Ba./Cho.)が考えたんですけど。良いコーラスラインで、よく思いついたなって。歌詞が上がるのが歌入れの当日なんで(笑)、関根さんは歌詞を知らずにとりあえずコーラスラインを考えていて、レコーディングの時に初めてそれが入るんですけど。デカめに音量を出したくなる、素晴らしいコーラスラインでした。

海の一番の思い出は、幼少期に行った「ハワイの海」

——小出さん自身は「海になりたい」ですか?

うーん(笑)ただ僕、全然泳げないので。海行ったら行ったで何か怖いんですよね。だからきっと恐らく、現実の海がすごい好きってわけじゃないんだと思います。「海」に関して思い出してみると、溺れかけて怖かったということとかで。子供の頃、ハワイの潜水艦ツアーに行ったんですよ。潜水艦に乗る場所が海の真ん中で、そこまで船で行くんです。潜水艦までのその船が、むっちゃくちゃ揺れて、それで完全に船酔いしちゃって。妹は当時小さかったんですけど、もうダウンしちゃって。潜水艦に乗る前に妹と、父、母はもう帰っちゃったんですよ。おじいちゃんとおばあちゃんと僕だけで行ったんです。

——強いですね(笑)

いや僕もダメだったんですよ。でも、なんとか乗って。潜水艦の閉塞感ってすごくて、かつ船酔いが全然持続するんですよね。おばあちゃんに「しんどい…」ってずっと言いながら乗って、ハワイの海をずっと行くと旧日本軍の沈んだ飛行機とか、綺麗な魚がワアってなってて。でも「綺麗だな」っていうのと、死にそうに船酔いしてる自分の気持ちが戦ってて。それでおばあちゃんに「なんでこんなに船酔いしてるんだろう」って言ったら、「日本人だから、体ちっちゃくて酔っちゃうんだよ」って。「日本人だからか」ってチラッと横を見たら白人のおじちゃんが思いっきり吐いてました。海の一番の思い出はこれです(笑)

——ええ!(笑)

(笑)。だからあんまり現実的に海になりたいって訳ではないですね。

音楽へのリスペクトと、文学へのリスペクト

——ベボベといえば、文学的で叙情的な歌詞が印象的ですが、普段どんなところからインスピレーションを受けていますか?

いま「文学的」とおっしゃっていただいたのに対抗する訳じゃないんですけど、もう「文学的」って言われるのが本当に嫌だなと思っていて。

——え!

あ、今、嫌だと思ったわけじゃないですよ。日頃から「文学的だって言ってくれるな」と思っていて。なぜかというと、自分が文学とか文芸に対するリスペクトが強いから、申し訳ないというか。だから、今作に「歪む文学」というフレーズをあえて使ったんです。それを入れたら「文学的だ」って言われないかなと思ったら今言われたんで、ちょっとびっくりして(笑)。

――「文学的と言ってほしくない」というのは、文学に対するリスペクトからだったんですね。

今回は、制作の合間で、頭を回転させるために結構本を読んでいました。最近読んだのは『ペンギン・ブックスが選んだ日本の名短篇29』(新潮社)という本で、村上春樹さんが解説してるんです。でも僕、村上春樹さんの作品は、『アンダーグラウンド』(講談社)というノンフィクション以外は読んだことがなくて。ただ、文章がめちゃくちゃ上手いっていうのはわかっていて。何かを解説するのもめちゃくちゃ上手い。村上さんの翻訳した作品はいろいろ読んでいます。

だからこれも、村上さんが解説したとあって「絶対面白いだろうな」と。読むと、三島由紀夫の『憂国』という作品が載ってまして。多分、20年くらい前に読んだことがあって、当時はあまり分からなかったんですが、今読んだら、もう本当にすごくて。お話の壮絶さはもちろん、比喩表現や一つ一つの場面描写、心情描写が。

それを読んだあとだったから、なおさら「僕の歌詞など文学的だと言ってくれるな」と。だから今回、歌詞に「文学」という言葉をあえて使ったのは、自分を文学的だと言ってくれるのは申し訳ないから、恥ずかしいからというのが1つと、あとは同時に自分が音楽やっているとか、これだけ悩んで歌詞書いているっていうことは同時に音楽へのリスペクトもそうだし、文学とか文芸へのリスペクトもそれだけあるからっていうこと。自分は文学をやっている人間ではないと思っているんですけど、その肌の表面をかすめることが出来たらなと思っています。

メンバーと演奏して曲を作る、どんなもんでも楽しかった

――楽曲制作の面では、コロナ禍以前と現在とで心境の変化はありましたか?

今って、データのやり取りで曲を作っていくことが簡単にできますし、実際うちの制作も最終的にはデータのやり取りでデモを作っていくんですけど、それに至るまでのリハスタで音出して曲作る、みたいなプロセス……。メンバーでスタジオに入って色々曲を作ったり、ああだこうだ言いながら演奏したり。それ自体が、やっぱりどんなもんでも楽しかったんですよね。なにせ2020年は、メンバーに4カ月間、直接会ってないというのもあったんで。「リハーサルやれるだけで楽しい」みたいなのがあって。

それから1、2年経って、2020年よりはライブや制作活動が増えてはきましたけど、やっぱり演奏する一個一個の機会が貴重だと。そして、それが楽しいっていう感覚を持っています。だから、今回もその演奏する体感というか、手ごたえや感触を大事にしましたね。三人で演奏しているときに、それぞれが良い感触になるまで自分たちのパートを調節して、みたいなことができましたね。

――今回、編曲がBase Ball Bearとなっているんですが、音作りやフレーズなどはそれぞれで考えられているんですか?

基本はスタジオで全員で曲を演奏しながら組んでいくので。全体をこういう風にああいう風にしてくれっていうのは僕からオーダーしてっていうのはあるんですけど、ここのフレーズはこうしてみたらどうかという提案は二人からもらって、少しずつ丁寧に大枠決めて、そのあとディテールを詰めていくっていう感じです。

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三度目の「武道館公演」への意気込み、
前回の武道館から10年間を振り返って

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WRITER

Eri Kimura

Eri Kimura

三重県出身。学生時代は、読書や映画鑑賞、バンド活動に、アパレル店員として働くなど多趣味全開で奔走。現在は新人編集者として奮闘中!

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