映画『逆光』監督・主演を務めた須藤蓮さんにインタビュー!
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2022.6.5sun

映画『逆光』監督・主演を務めた須藤蓮さんにインタビュー!

6月25日(土)より名古屋シネマテークで公開される映画『逆光』。監督を務めたのは、今作が監督デビュー作となった俳優の須藤蓮さん。NHK連続テレビ小説や大河ドラマなどの話題作に出演する俳優でもありながら、映画監督として新たな挑戦を試みる姿に注目が集まっています。6月からの名古屋での映画公開に向け、須藤蓮さんに作品の魅力や込められた想いをインタビューしてきました。

映画『逆光』STORY

1970年代、真夏の尾道。22歳の晃(須藤)は、好意を抱く大学の先輩・吉岡(中崎)を連れて帰郷する。先輩を退屈させないために晃は幼馴染の文江(富山)に誰か暇な女子を見つけてくれと依頼して、少し変わった性格のみーこ(木越)が加わり、4人でつるむようになる。やがて、みーこへの眼差しを熱くしていく吉岡の姿に晃は悩むように―。

渡辺さんとの共通言語は、好きな映画『君の名前で僕を呼んで』

――映画を制作するまでの経緯を教えてください。

須藤蓮さん  テーマを決めたのは、実は脚本を担当していただいた脚本家の渡辺あやさんで、コロナ禍に制作を決めた映画だったので、出られる役者から考え始めました。コロナがどういう病気なのかもわからなくて、かかったら後遺症が残るとか、何も整理されないままそういう情報が出回っている時で、それでもいま映画を撮るということにのってくれる役者を考えて逆算した時に、まず、僕は出られるなと思って、あとは、渡辺あやさんの脚本で、僕がメインキャストを務めた『ワンダーウォール』で一緒にメインキャストを演じたうちの1人、中崎くんもきっと出てくれるだろうと思いました。

そして、僕、中崎くんの2人の並びを考えた時に、そこに富山えり子さんがいたらいいんじゃないかなと渡辺さんと話して、僕は舞台でご一緒したことがあったし、すごく好きな役者さんなので、その3人が先に決まりました。
それで、どんな話ですかと話していたら、「それは青年同士の恋愛じゃない?」ってあやさんが言って、その時になるほど!って思って、そのテーマにすごくしっくりきて、それでいきましょう!となったのがテーマを決めたきっかけです。

いま、こういうことを描くべきですとか、そういう順序ではなかったです。映画『君の名前で僕を呼んで』が僕も渡辺さんもすごく好きだったので、その共通言語みたいなものがあったのも大きいかもしれないですね。かつ、渡辺さんがそれまで何度も描いているテーマではないもの。実は、僕と渡辺さんが撮ろうとしていた映画がコロナで撮れなくなってしまったことから、別の作品を考え出したのが『逆光』なので、そのテーマともかぶらず、いまの状況の中で企画を立ち上げました。なんでもできるところから決めたわけではなく、今撮れるもので一番いいものを考えていった結果、そういうふうになったのが経緯。

――映画を作るきっかけとなった脚本家・渡辺あやさんとの出会いとは?

須藤蓮さん  渡辺あやさんは、めちゃくちゃすごい面白い人で、僕が思うこういう作り手の人がいたらいいのにって思っていたままの人で、初めて会った時は、こんな人いるんだって衝撃を受け、こういう感じになりたいなと思いました。一番近くで勉強をしたくて、最初はとにかく脚本を書いて持って行くところからコミュニケーションがスタート。1日で書いたものも恐れ多くも送ってみたりしていましたが、「そんなものでは表現ではない」などと言われたり、いろんな話を聞きながらやりとりを重ねるうちに、自分の脚本を送って直してもらうやりとりが始まって、それが『逆光』の前に準備していた『blue rondo』という作品でした。脚本は完成していたんですが、コロナ禍で撮れなくなってしまったので、いずれ撮影するこの作品の練習もかねて、コロナ禍で作ろうとなったのが『逆光』。以前に出演した『ワンダーウォール』という作品に僕はすごく懸けていて、一つの作品は世に出たらそれで終わりですが、『ワンダーウォール』を届けていく過程でいまの『逆光』のような活動をやりたく、上映する地域に行って、話をするイベントとか立ち上げようとしていましたが、それがコロナ禍でできなかったんです。本作では吉田寮生に出てもらっていたりと、『ワンダーウォール』の不完全燃焼を爆発させたのが『逆光』ですね。

渡辺あやさんの脚本は、へこむくらいめちゃめちゃすごい!

――そんなすごい脚本家・渡辺あやさんの脚本を読んだ感想や、一緒に制作してみていかがでしたか?

須藤蓮さん  一緒に企画からやったことがなかったので、思いつきでぽろっと話していたことがこうやって構成されていくんだと、めちゃめちゃ新鮮でした。脚本もすごく面白かったですね。はい、きた!って感じでした。脚本もめちゃめちゃしっくりきました。引用の使い方も、例えば三島由紀夫のこの引用は使うと決めていたものがあったんですけど、それがどういう形で出てくるのかとか、僕は想像がついていなかったので、脚本という形で来た時に、本当にさすが!って、感じでした。やっぱりやっていて思うのは、本当に才能がすごいと思いますね。才能って言葉以外にあんまり表現ができないんですけど、僕がちょっとへこむくらい、やっぱり、めちゃめちゃすごい!
生きていく中で理屈ってあるじゃないですか、右脳と左脳のような、感覚と論理のバランス感覚のようなものがちゃんと両輪で、いい具合に感覚のほうがちょっとだけバランスが高いような、その両方を巧に操れる人ってなかなか見たことがないので、感覚と構成の理屈というものを完璧に行き来し、ものを作る上で完璧な人です。脚本を書く上で、そこのバランス感覚とか、置き所みたいなのが、言語化できないですが(笑)本当にすごいなと思いました。

映像が持っている光の印象に合わせて付けた音楽

――映画に寄り添う音楽も印象的でした。音楽はどのように生まれていったのでしょうか?

須藤蓮さん  音楽は、ある程度編集ができているものを大友さんへ持って行って、僕が勝手にイメージしていたものを、例えばパーティーのシーンはこういう感じの音楽だよねって事前に決めていたのをお渡しして、聴いていただき、大友さんの体を通して生まれていきました。例えば『君の名前で僕を呼んで』の音楽とか、結局その音楽は使わなかったですけど、タイトルを20個くらい書いてお渡ししました。「若さのきらめき」とか「海」「みーこのテーマ」「みーこの失踪」「永遠の一瞬」など、1つずつ曲のタイトルが実はあって、タイトルを付けてお渡しして、そこからインスピレーションしたのをいただいて、足し引きして生まれました。
言っても2人とも本物なので、僕が言ったことよりもすごいものが来ました。大友さんもすごいですよね。僕はあんまり音楽に詳しくないですし、脚本も書けないので、すごい人たちのすごいところを借りている感じです。アルペジオがいいですねとか僕は言ったりしていましたが、音楽に関して大友さんは、映像が持っている光の印象に音楽を付けたとおっしゃっていましたね。

――美術や衣装もきれいで目を引きました。こだわった部分など教えてください。

須藤蓮さん  美術や衣装は尾道の古道具屋さんを1軒1軒美術部や衣装部の方と回りながら、1個ずつ選んでいきました。美術と衣装はすごく自分でもこだわりたかった部分でもあって、蚊帳の色を決めるのに時間をかけたりとか、3色借りてきて全部合わせて決めたりとか、いまも宿で使っている建物を一棟貸しして、電飾などそこにあるものを全部入れ替えました。

自我に囚われやすくなる監督とOKを出してほしい役者としての葛藤

――今回、監督と主演を両方務められていて、その大変さや苦労はありましたか?

須藤蓮さん  監督としてこうしてほしいと自分が一番わかっているんですけど、できない時があるので、ずっと引き裂かれる感じがしました。見えているのに体現できない時が生じて、たぶん違うなと内心わかっていても役者の僕はOKが出てほしい、それを自分で判断がつかなくなって他の人に言ってもらって、やっぱりだめだよね、頑張ろう、ってやっていました。

――役者の自分と監督の自分と常に2人いるような状態なのでしょうか?

須藤蓮さん  同じ人ではありますが、判断する部分が違うような感じです。少し低い位置に役者の自分がいて、なんとか乗り越えたいと思っているんですけど、監督としては高いところから指示しなくてはいけない状況もあって、2人いるに近い感じかもしれないですね。演じている自分がいて、それをOKかけてから見て、わぁ、僕の芝居…違うってなるわけですよ。僕の芝居が違うけど、他の人の芝居が良いとか、トータルで見て、自分の役者のクオリティだけを見ているわけにもいかないから、でも自分の芝居に目がいってしまうのはやっかいだったかもしれませんね。面倒なことが多い(笑)!自我みたいな、承認欲求とか、そういうものに囚われやすくなる、すごく自分の人生にとっての修行みたいなもの感じました。役者として良い芝居をしたって言われたい、けどそんなことはしていなくて、そういうものから解放されたいけど、それをするにはそういう形を得ないといけなかったのかもしれないですね。

――自分の芝居が違うって感じるのは、目指す芝居があるからなんですね。

須藤蓮さん  見るとわかるって感じです。見て、あ、違うってなります。理想的な芝居っていうのはあって、流れですね。空気が作為の中で止まらない、人の無駄な意識がそこに滞在していないと言いますか、かっこよく見られようとおしゃれして行ったりするじゃないですか。でもそれって、おしゃれしようとしているおしゃれで、そういうことをしなくても自然におしゃれな人っているじゃないですか。そつなく普段からおしゃれな人、そういうものを目指すような感じでしょうか。そうなっちゃったおしゃれとか、そういうものを芝居で目指していて、他の人にも求めているんですけど、自分がそれに到達するのが難しい。でも逆に言うと、普通に芝居しているとそこに到達する前にOKが出てしまったりと、なるべくそこに到達するまでOKを出さないとか、編集の時にそうじゃないところは切ってしまうとか、自分が良いと思う芝居を全員分切っていくなど、役者に対するビジョンはすごくありますね。

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自分以外の役者が自分以上に輝いていないといけない(須藤蓮さん)

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WRITER

Mai Shimomura

Mai Shimomura

岐阜県出身。スタジオやブライダルでの 撮影経験を6年経て、編集者へ転身。 カメラと映画が好きなミーハー女子。 素敵な出会いを写真に記録しながら、 みんなの心に届くモノを発信したい。

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