【2/11より公開中】映画『ちょっと思い出しただけ』松居大悟監督と主演の池松壮亮さんにインタビュー!
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2022.2.23wed

【2/11より公開中】映画『ちょっと思い出しただけ』松居大悟監督と主演の池松壮亮さんにインタビュー!

2月11日(金・祝)より公開中の映画『ちょっと思い出しただけ』。『バイプレイヤーズ』シリーズや『くれなずめ』を手掛けた松居大悟監督が描く、初となる完全オリジナルラブストーリーです。

今作は、クリープハイプの尾崎世界観さんが自身のオールタイムベストに挙げる、ジム・ジャームッシュ監督の名作映画『ナイト・オン・ザ・プラネット』に着想を得て書き上げた楽曲をもとにした作品。第34回東京国際映画祭で観客賞、スペシャルメンションをW受賞したことでも話題となり、注目が高まっています。

映画『ナイト・オン・ザ・プラネット』の同時刻に走るタクシーで起きる物語をオムニバスで描く構成に対し、2021年7月26日の佐伯照生の誕生日から始まるこの物語は、1年ずつ同じ日を遡り、別れてしまった男女の“終わりから始まり”の6年間を描きます。W主演を務めるのは、初共演となる池松壮亮さんと伊藤沙莉さん。2人の息の合った掛け合いも見どころの一つです。

今回は、松居大悟監督と主演の池松壮亮さんに、製作の裏側や本作に込めた想いをインタビューしてきました!

「クリープハイプ」のバンドを懸けた曲「ナイトオンザプラネット」に長編映画で応えたい

――映画『ナイト・オン・ザ・プラネット』から着想を得たクリープハイプの楽曲を受けて脚本を書かれたとのことですが、どんな想いを込めたのでしょうか?

松居監督  きっかけは、2年前の春にクリープハイプの尾崎くんから送られてきた曲でした。尾崎くんとは10年ぐらいの付き合いなんですが、高校の時にジム・ジャームッシュ監督の『ナイト・オン・ザ・プラネット』を大晦日の夜に観て、その明け方にバンドをやろうと思い立ち、映画の中のセリフをとって「クリープハイプ」というバンド名を付けたという話を彼から聞いていて、そんな彼らがいまこの曲を作ったということは、バンドを懸けた一曲なんだと感じて。

きっと彼は「MVを撮ってほしい」というニュアンスで送ってきたと思うんですが、そうではなくて、長編映画で応えたいと思ったんです。歌詞を分解してストーリーを作るのではなく、この曲が最後に流れるラブストーリーを作ろうというところから台本を考えていったのが最初の経緯ですね。

相手のことを想ったり、すれ違ったりするようなラブストーリーを作ってみたいと思ったのは、きっとコロナで人と会えなくなったから。コロナだからこそ生まれた音楽で、コロナだからこそ生まれた物語だと思っています。人と会えないから苦しいなと思うけれど、その分、人と会えた時の喜びやうれしさなどもあるよなって、思いながら現代から遡っていく構成にしようと思いました。

――映画のラストで曲が流れた時に、『ちょっと思い出しただけ』というタイトルがしっくりきて、すっと心の中に入ってきました。

松居監督  実は、最初は違うタイトルだったんです。『ナイト・オン・ザ・プラネット』がこの星のいろんな夜の話に対して、本作は星の中の小さな東京という街の話だったので、“星の中のつま先”みたいな意味を込めて、『星につま先』というタイトルを付けていました。自分ではいいタイトルだなと思っていたんですが、みんなに「わかりにくい」と言われて、曲の中にあるフレーズの“ちょっと思い出しただけ”をすすめられて、クランクイン直前に『ちょっと思い出しただけ』になりました。撮影している中、そしていまはこのタイトルで良かったなと思っています。

作ることの意義や可能性を感じ、自分も自信を持って勝負できると思った

――第34回東京国際映画祭では、「今回は勝負したくて池松さんにお願いした」という話もあったかと思いますが、脚本を読んだ時の印象はいかがでしたか?

池松さん  撮影に向かって脚本はどんどん変わっていくものなので、最初の段階では観て頂いたものとは随分違うものではあったんですが、この企画自身が持つ独自性と可能性を感じて、何かこの世界に漂うもの、横たわるもの、そういうものを掴み取りつつ恋愛映画として昇華できるのではないかなと思いました。

――怪我でダンサーを諦めた照生を演じるにあたって、どんな役づくりをしましたか?

池松さん  ダンスはやりたくなかったです。正直に言うと(笑)。やったことがないので、簡単に“できる”とか、できる風でやりたくないと言いますか、何十年ダンスをやり続けてきた人生に、1カ月でもっていくのはあまりにも無謀だと思いながらも、そこは松居さんにお願いし、なるだけ離れて撮ってくださいと(笑)。寄りたい時は顔だけにしてほしいとお願いしつつ、ごまかしごまかし全うしました。挫折に関しては、コロナ以前という絶対的に戻れないあの頃というのを、世界共通で経験していたわけですから、そのことのメタファーになればいいなと思っていました。伊藤さん演じる葉ちゃんに娘が生まれて、母親になったということと、照生が怪我をしてダンスができなくなったということが、2つのメタファーとして人生というものを浮かび上がらせるような、観る人の記憶スイッチに優しく触れる様に作用してくるといいなと思っていました。

正面から描くラブストーリーは、今までやってきたメンバーでやりたかった

 
――松居監督のこれまでの作品の中で、正面から描くラブストーリーは初めてかと思いますが、その心境や実際にやってみて感じたことは?

松居監督  コロナになってすぐの時は、明るいコメディをやりたいとか、こういう状況だからこそどんな映画を届けるべきなのかを考えて、「今みんなは、どういう映画が観たいだろう?」と思った時に、決して派手ではないけれど、何気ない日々だとか、さり気ない感覚とか、そういったものをちゃんとすくいとるような――例えば、育てている鉢植えの育ちがちょっと良くてうれしいとか、そういうことで喜べるような物語をなんとなく考えていました。僕は今36歳なんですけど、真ん中をずっと避けてきたんですよね。家族ものや恋愛ものに対して、恥ずかしさや照れ隠しがあって。前作の映画『くれなずめ』も友達の話ですが、照れ隠しで最後はふざけるとか。そういうのももういいかと思って、真ん中もやるし、照れ隠しもいらないくらい正面からやろうと思ったんです。時代と歳からなのかなと思いますね。

真ん中をやる時は、今までやってきたメンバーでやりたかったです。尾崎くんや池松くんもそうですし、カメラマンの塩谷くんも初期の頃も一緒にやっていましたし、尖ったことをやっていたメンバーで、真ん中のことをやろうと考えていたのもあります。実際に真ん中をやってみたら、すごく面白かったですね。自分たちらしい真ん中をやれているような気がしました。これまでの流れもあって、自分たちの胸の張れる作品をみんなのおかげでできたような気がします。

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池松さん「自分たちの青春に決着をつけよう」と言われたような気がした

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WRITER

Mai Shimomura

Mai Shimomura

岐阜県出身。スタジオやブライダルでの 撮影経験を6年経て、編集者へ転身。 カメラと映画が好きなミーハー女子。 素敵な出会いを写真に記録しながら、 みんなの心に届くモノを発信したい。

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